okuzawatsの日記

モバイルアプリケーション開発の沼💀

定率成長配当割引モデル

書いている人

モバイルアプリケーションアーキテクトとして働いています。モバイルアプリケーションのアーキテクチャ、自動テスト、CI/CDに興味があります。


定率成長配当割引モデルは、将来の配当を元に、企業の現在価値を評価するためのモデルです。ここで、企業は成長し続けるという期待があるため、それに伴い配当も毎年成長率 g で増えていくという前提を置きます。また、1年後の配当を現在価値に割り引くため、割引率を ρ とします。

この時、1年後の配当の現在価値(Present Value)は以下のように表すことができます。 D は配当(Diviend)です。割引率を用いて配当を現在価値に割り引いています。

$$ \begin{equation} \begin{split} PV_1 = { \frac {D_1} {1 + \rho} } \end{split} \end{equation} $$

2年後の配当の現在価値は以下のように表すことができます。配当は成長率 g で成長します。

$$ \begin{equation} \begin{split} PV_2 = { \frac {{D_1} \cdot {(1 + g)}} {(1 + \rho)^2} } \end{split} \end{equation} $$

(1)式と(2)式から、以下のように書くことができます。

$$ \begin{equation} \begin{split} PV_2 = PV_1 \cdot { \frac {1 + g} {1 + \rho} } \end{split} \end{equation} $$

同様に、3年目の配当の現在価値も以下のように書くことができます。

$$ \begin{equation} \begin{split} PV_3 = PV_2 \cdot { \frac {1 + g} {1 + \rho} } \end{split} \end{equation} $$

4年目以降も(4)式のような関係式が成立するので、配当の現在価値の列は等比数列となることがわかります。等比数列の一般項、および等比数列の和は、それぞれ以下のように表すことができるのでした(数列、等比数列、等比級数、無限等比級数を参照)。ここで a は初項、 r は公比です。

$$ \begin{equation} \begin{split} a_n = {a}{\cdot}{r^n} \end{split} \end{equation} $$

$$ \begin{equation} \begin{split} S_n = { \frac {a {\cdot} (1 - r^{n+1})} {1 - r} } \end{split} \end{equation} $$

企業の現在価値は、将来の配当を現在価値に割り引いた合計です。1年目から n 年目までの配当の合計を現在価値とします。配当の現在価値の和は以下のように表すことができます。

$$ \begin{equation} \begin{split} \sum_{k = 1}^n{PV_k} &= { \frac {{ \bigl( \frac {D_1} {1 + \rho} \bigr)} {\cdot} \Bigl(1 - { \bigl( \frac {1 + g} {1 + \rho} \bigr) }^{n+1} \Bigr)} {1 - { \bigl( \frac {1 + g} {1 + \rho} \bigr) }} }\\ &= { \frac {{D_1} \cdot \Bigl( 1 - \bigl( { \frac {1 + g} {1 + \rho}} \bigr)^{n + 1} \Bigr)} {\rho - g} } \end{split} \end{equation} $$

一般的に企業はゴーイング・コンサーンを前提に置いているので、 n → ∞ とします。ここで g > ρ である場合を考えると、企業の現在価値は無限大に発散します。無限大の価値を持つ資産は存在しないため、 g < ρ という条件を置くことができます。

(7)式、および上記の仮定から、企業の現在価値を PV と置くと PV は以下のように表すことができます。

$$ \begin{equation} \begin{split} PV &= \lim_{n \to \infty}{\sum_{k = 1}^{n}{PV_k}}\\ &= \lim_{n \to \infty}{\frac {{D_1} \cdot \Bigl( 1 - \bigl( { \frac {1 + g} {1 + \rho}} \bigr)^{n + 1} \Bigr)} {\rho - g}}\\ &= \frac {D_1} {\rho - g} \end{split} \end{equation} $$

以上から、企業の現在価値は、1年後の配当、割引率、および配当の成長率という3つの数字を用いて表すことができるということがわかりました。

References

  1. 砂川伸幸, (2017), コーポレートファイナンス入門 第2版, 日本経済新聞出版
  2. 手嶋宣之, (2011), 基本から本格的に学ぶ人のためのファイナンス入門, ダイヤモンド社
  3. 数列、等比数列、等比級数、無限等比級数(最終アクセス日:2024年5月29日)