テックリードとは
目次
新興のIT企業を中心に、テックリードという役割が広がっています1。かく言う私もテックリードをやっているわけですが、果たしてこのテックリードとは、一体どんな役割なのでしょうか。翻って考えてみたいと思います。
何冊かの本から、あらかじめ参考になりそうな記述をメモしておきました。
- ソフトウェアの開発チームに対する責任を負う役割を持つ、技術面でのリーダー (Kua, (2015))
- マネージャーが人員のリーダーであるのに対し、テックリードは技術的取り組みを主導する役割 (Winters他 (2021))
- プログラミングの最前線からは退き、技術面での貢献とチーム全体のニーズをバランスさせ、プロジェクトを推進するための大局的な視点を持つ (Fournier (2018))
どうも曖昧然としてはいますが、技術面でのリーダーシップを発揮する役割であることは間違いなさそうです2。いわゆるIndividual Contributor(IC)でも技術面でのリーダーシップを発揮することはありそうですが、違いは「チーム全体の生産性」に対する責任を負うかどうか、という点にありそうです。
面白い記事がありました。初出はWEB+DB PRESS Vol.103とのこと。
少し長くなりますが、引用します。
テックリードの仕事は輝かしく見えるかもしれない。ただ実態は、地味である。またそうであるべきだ。技術的にチャレンジだったり、やりがいのある仕事はテックリードのものではない。そういう「おいしい」仕事はお膳立てだけして、チームメートに譲るのだ。
それよりも、誰もやりたがらないものがテックリードの仕事である。ミーティングの進行役、先を見越したプロジェクトマネジメント、コードのクリーンアップなど。とにかくチームの生産性を上げることが使命である。また、表面上は成果として見えないようなものにも取り組むべきだ。たとえばチームの技術スコープが将来的に広がるような技術やデザインの採用を促進するなど。
自分がテックリードになって「自分の仕事は地味だな」と感じたら、うまくいっている証拠なのでがんばってほしい。
(Minowa (2018))
とにかく地味に、チームの生産性を上げることがテックリードの使命であるということ。また、チームメートが活躍するためのお膳立てをして美味しいところは譲ることもテックリードの仕事である、とも書いています。
「テックリード」という響きは何やら格好いいですが、その響きほど格好いい役割ではなさそうだということがわかりました。改めて、自分自身のテックリードとしての仕事を振り返ってみたいと思いました。
追記
Forkwellさんからインタビューを受けて、テックリードをしていた時の仕事の内容や、その難しさ、楽しさについて話しました。以下の記事に掲載されています。
自分のコメントが掲載されていることを差し引いても、何人ものテックリードにその仕事内容をヒアリングした、面白い記事であると思います。
References
- Patrick Kua, (2015), Talking with Tech Leads: From Novices to Practitioners retrieved from https://www.amazon.co.jp/dp/B014Q2C4M4/ (最終アクセス日:2022年8月2日)
- Titus Winters, Tom Manshreck, Hyrum Wright, (2021), Googleのソフトウェアエンジニアリング, オライリージャパン
- Camille Fournier, (2018), エンジニアのためのマネジメントキャリアパス テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド, オライリージャパン
- Taro Minowa, (2018), テックリード, retrieved from https://gihyo.jp/dev/serial/01/continue-power/0011 (最終アクセス日:2022年8月2日)
- Forkwell Press, (2022), テックリードはキャリアの分岐点。取材でわかった6系統の役割と市場価値のリアル | エンジニアの生き様をウォッチするメディア, retrieved from https://pr.forkwell.com/articles/six_patterns_of_tech_leads/ (最終アクセス日:2023年2月1日)
書いている人 😎

茨城県つくば市在住のモバイルアプリケーションアーキテクト(Androidが得意です)。モバイルアプリのアーキテクチャ、自動テスト、CI/CDに興味があります。いわゆる「レガシーコード」のリファクタリング・リアーキテクチャが好きです。
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